はじめに

富士電機株式会社の田島様にお話を伺いました。田島様は、電車の推進用インバータおよびモータドライブの設計・試験のために、同社の鉄道機器開発部門へTyphoon HIL社のソリューションを導入された方です。HILを試験にどのような理由で、どのように活用されているのかについて、いくつかの質問にお答えいただきました。以下、ぜひご一読ください。

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図1.今回のインタビューにご対応いただいた、富士電機のAhmed様と田島様

貴部署について少しお聞かせいただけますか?

私たちは主に、鉄道車両向けのモータドライブを開発しています。組織は「新幹線チーム」と「在来線チーム」の2つに分かれており、私自身は在来線チームを担当しています。

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図2. 富士電機が手がける在来線車両と新幹線車両

Typhoon HILのソリューションを最初に知ったきっかけを教えてください。

あるカンファレンスの展示会で、Typhoon HILのブースに立ち寄りました。そこでは、複数台のモータドライブをエミュレートした、コントローラHIL(C-HIL)によるモータドライブのデモが行われており、非常に完成度の高いものだと感じました。鉄道用途では複数台のモータとインバータをエミュレートする必要があります。Typhoon HIL604であれば、1台のHIL装置で最大4台のモータとインバータをシミュレートできると知り、大変感銘を受けました。

HILの評価から採用まで、どのように進められましたか?

購入を決定する前に、まずHIL604リアルタイム装置を数か月間評価することにしました。これにより、導入に伴うリスクを低減できました。評価期間を通じて、HIL604は非常に扱いやすく、短期間で立ち上げられ、当社の技術要件をすべて上回っていることを十分に確認できたため、正式に採用することを決めました。

HILソリューション導入の最初のステップは、試験対象のコントローラとHILのデジタル・アナログ入出力(IO)との間のインターフェースを構築することでした。市販のブレークアウトボードを使用し、専用ケーブルを自作しました。ブレークアウトボードを使ったことで、この作業は大幅に短縮されました。

HIL試験を導入する以前の主な課題は何でしたか?

電力のダイナモベンチが唸りを上げる傍らで、モータドライブの制御試験を行うのは、決して快適な作業ではありません。しかも、富士電機の鈴鹿工場全体を見ても、200kWの電動機に対応できるダイナモベンチは1台しかありません。

また、電車の開発に携わる他の多くのチームもこの大電力試験設備を使用しているため、必要なときに空きを確保することは非常に困難です。設備が空いている場合でも、大電力試験設備のセットアップに最長で1か月を要し、開発・検証プロセスに大きな遅れが生じていました。

これらの課題に加えて、コントローラは多くの動作条件(例: 列車のさまざまな運転条件、き電電圧やき電インピーダンスの違いによる各種ケース)で検証する必要があります。しかし、大電力試験室で再現できるのはそのごく一部にすぎず、テストカバレッジが大きく制約されていました。

HILテストベッドについて、詳細を教えていただけますか?

VVVFインバータ、電動機、き電系統、車両ダイナミクスをHIL604上でモデル化しています。実機のインバータ制御装置は、専用のインターフェースボードを介してTyphoon HIL604に直接接続しています。

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図3.富士電機VVVFインバータ。
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図4. HILを用いてテストされているモデル例

HIL試験を導入したことによる、チームにとっての主な利点は何ですか?

HILテストベッドは、一度構築すれば24時間365日連続して使用でき、リモートからのアクセスも可能です。大電力試験設備の代わりにHILを用いることで、より多くのケースを、より高い頻度で、事実上連続的に試験でき、設計のごく初期段階から試験を始められます。

HILを使うことで、より多くのケースをより頻繁に試験でき、設計のごく初期段階から試験を始められます。

制御の試験・検証のあらゆるフェーズでHILテストベッドを積極的に活用することで、多くの時間とコストを節約できました。フルパワー試験を行うのは、最終段階のみです。

さらに、現行の車両試験では、多くの大電力運転条件で列車を試験できないため、テストカバレッジに大きな不足があることが明らかになりました。これらの動作点をHILテストベッド上でシミュレートすることで、テストカバレッジを大幅に向上させることができました。おおよそ、5日間を要していたフルパワー試験は2日未満に短縮されました。これにより、場合によっては開発・試験期間を60%以上削減できました。 

大電力の運転条件では試験できない動作点をHILテストベッド上でシミュレートすることで、テストカバレッジを大幅に向上させ、試験時間を最大60%削減することができました。

HILを導入する以前は、フルパワーの実機で試験を始めることに、かなり大きな心理的負担がありました。1500Vの高電圧で試験を行うため、実機コンバータのパワーステージを損傷させないよう、細心の注意を払う必要があったからです。現在は、HILで動作を徹底的に試験・検証したうえでフルパワー試験に進むため、大電力試験の負担が軽減されました。現在、全試験の80%をHILテストベッドで、20%を大電力試験設備で実施しています。

フルパワー試験に進むのは、HILで動作を徹底的に試験・検証してからです。これにより、大電力試験の負担が軽減されます。

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図5.富士電機のHIL604卓上HILセットアップ

今後、貴社内でTyphoon HILの活用をどのように広げていく予定ですか?

すでに他の製品ラインにもHILの活用を広げており、産業用インバータの試験にTyphoon HILを導入しています。今後は、補助電源装置の試験にもHILを導入したいと考えています。あわせて、HILによる試験の自動化にも取り組んでおり、完全な試験自動化を目指しています。 

クレジット

テキスト| イヴァン・チェラノヴィッチ
ビジュアル| 富士電機
謝辞| 本ストーリーを共有してくださったインタビュー担当の杉山勇氏、ならびにインタビューにご協力いただいたAhmed様、田島様に感謝申し上げます。